MSXは、1983年秋に8ビットパソコンの統一仕様として発表されました。一つのメーカーがあるマシンをつくり、ソフトはそのマシンでしか使えない……というのとは違い、MSXは複数のメーカーが仕様を元にマシンを発表し、ソフトはMSXと表示されていればどのマシンでも使えました。MSXは最も基本的なハードウェアおよびDOS、BASICといった基本ソフトウェア、あらゆる拡張の基礎となるスロットの仕様を決めることから始まったため、根底はしっかりしていました。そのため多くの家電メーカーの賛同を得て、通信端末、日本語ワープロ、ファクシミリ・オートメーション、オーディオ・ビジュアル・コントロールといった様々な分野での利用も高まると思われていましたが、めまぐるしく移り変わるパーソナルコンピュータの世界の中で、結局パソコンとゲーム機の中間のマシンという位置づけになったようです。小さい頃にMSXでゲームをして遊んだ人も多いでしょう。
MSXも時代の流れに合わせて、1985年5月にはグラフィックを強化したMSX2、1988年には漢字処理を標準化したMSX2+発表、というようにバージョンアップして、低価格ながら多機能を提供する完全下位互換パソコンとして多くの人に利用されました。1990年にはついに16ビットCPUを搭載したMSXturboRが登場し、驚くほどの処理能力を発揮しましたが、それ以降新たな機種の発表はなく、発売されるソフトウェアの数も減り、一世を風靡したMSXも今となっては……といった感じです。
どんな人がどんなことにMSXを使っていたのかは興味のあるところですが、この前ラジオを聴いていたら、プロのミュージシャンは当時(10年くらい前)MSXをシーケンサー(自動演奏装置)として使っていたそうです。今でこそ専用のシーケンサーやMACで音楽を演奏していますが、それがなかった(あるいは非常に高価だった)頃に、MSXで演奏された曲がレコードになっていたなどと考えると、MSXはあれでけっこう世の中の役に立っていたんだなとうれしく思ったりするもんです。
BASICの画面
MSXのスペック表